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損益計算書（PL）・貸借対照表（BS）の構成と分類：理論と製造業の事例

損益計算書（PL）の基礎と構成

損益計算書（Profit & Loss statement, PL）は、企業の一定期間における経営成績を示す財務諸表です ()。期間内に発生した収益（例：売上高や受取利息など）から費用（例：仕入や人件費、消耗品費など）を差し引いて利益を計算します () (勘定科目とは？やさしい図解で本質がわかる〖はじめての経理〗 - 経理お役立ち情報 - 弥生株式会社〖公式〗)。日本の会計基準に基づくPLでは、収益・費用の性質に応じて科目を分類し、段階的に利益を算出するのが特徴です ()。主な項目と利益区分は次のとおりです。

• 売上高（収益） – 商品や製品の販売など本業から生じた収益 ()。企業の主要な営業収益を表します。
  
  

• 売上原価（費用） – 売上高に直接対応する製造原価や仕入原価です ()。売上高から売上原価を差し引いたものが売上総利益（粗利）となり、企業が本業から獲得した基本的な利益を示します ()。
  
  

• 販売費及び一般管理費（費用） – 営業活動にかかる諸費用で、従業員給与、地代家賃、減価償却費などが含まれます ()。売上総利益から販管費を引いた利益が営業利益であり、企業が本来の営業活動から得た利益を示します ()。
  
  

• 営業外収益・営業外費用 – 本業以外の活動から生じた収益・費用です。例えば受取利息や配当金は営業外収益、支払利息等は営業外費用に分類されます ()。営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を控除して得られる経常利益は、企業が通常の経営活動全体から得た利益を示します ()。
  
  

• 特別利益・特別損失 – 臨時的な要因による収益・費用です。設備売却益や災害損失など、通常の経営活動とは異なる一時的な損益が該当します ()。経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引いた税引前当期純利益は、法人税等の支払い前の利益です ()。
  
  

• 法人税等（費用） – 当期の利益に対して課される法人税、住民税、事業税の合計です ()。
  
  

• 当期純利益 – 税引前当期純利益から法人税等を控除して残る最終利益で、当期に株主にもたらされた純利益となります ()。
  
  

以上のように、日本の損益計算書では「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」と段階的に5つの利益が計算されます。この複数段階利益計算により、企業は本業の採算性（粗利や営業利益）から財務負担も含めた総合的な収益力（経常利益）まで把握できます ()。

貸借対照表（BS）の基礎と構成

貸借対照表（Balance Sheet, BS）は、企業のある一時点における財政状態を示す財務諸表です ()。具体的には、「企業がどのように資金を調達し（負債・純資産）、その資金を何に運用しているか（資産）」を表しています ()。貸借対照表は大きく資産・負債・純資産の3区分から構成され、それぞれがさらに細分類されます。

• 資産の部 – 企業が保有する財産で、将来企業に収益をもたらすと期待されるもの (勘定科目とは？やさしい図解で本質がわかる〖はじめての経理〗 - 経理お役立ち情報 - 弥生株式会社〖公式〗)。資産は流動性に応じて区分され、①流動資産（現金化しやすい資産：現金預金、売掛金、商品在庫など）、②固定資産（現金化しにくい長期保有資産：建物、機械設備、特許権などの有形・無形固定資産、および投資その他の資産）、③繰延資産（効果が将来に及ぶ支出：創立費など特別な項目）に分類されます () (勘定科目とは？やさしい図解で本質がわかる〖はじめての経理〗 - 経理お役立ち情報 - 弥生株式会社〖公式〗)。
  
  

• 負債の部 – 企業が背負う債務であり、将来の支出義務を伴うものです。負債も返済期間で区分され、①流動負債（1年以内に返済期限が到来する債務：買掛金、短期借入金など）、②固定負債（長期にわたる債務：社債、長期借入金など）に分類されます ()。
  
  

• 純資産の部 – 資産から負債を差し引いた残余の財産（自己資本）です。株主資本（資本金、資本剰余金、利益剰余金など）が中心で、株式会社の場合はここに株主の出資や歴代の蓄積利益が含まれます ()（このほか評価・換算差額や新株予約権等がある場合も純資産に計上）。純資産は企業が抱える負債を全て返済した後に残る正味の財産価値を示します。
  
  

(勘定科目とは？やさしい図解で本質がわかる〖はじめての経理〗 - 経理お役立ち情報 - 弥生株式会社〖公式〗)
図：貸借対照表（左）と損益計算書（右）の基本構造と5つの区分（①資産、②負債、③純資産、④収益、⑤費用）。損益計算書で算出された「利益」は貸借対照表の純資産（利益剰余金）に組み入れられ、両者はリンクしています (勘定科目とは？やさしい図解で本質がわかる〖はじめての経理〗 - 経理お役立ち情報 - 弥生株式会社〖公式〗)。

上図のように、損益計算書の結果と貸借対照表は直結しています。PL上で計算された当期純利益は、BS上の純資産（繰越利益剰余金）の増加要因となり ()、期間損益が資本に反映されます (勘定科目とは？やさしい図解で本質がわかる〖はじめての経理〗 - 経理お役立ち情報 - 弥生株式会社〖公式〗)。このように貸借対照表と損益計算書は別個のものではなく、利益を通じて結びついている点に留意が必要です。

初学者が混乱しやすい分類項目と注意点

財務諸表の項目分類において、初心者が戸惑いやすいポイントをいくつか挙げます。正しい分類を理解することが、信頼性の高い決算書類を作成する第一歩となります ()。

• 資産と費用の違い: ある支出が**「資産」（BS計上）か「費用」（PL計上）かの判断は、初心者が特に迷いやすい点です。資産とは将来の収益獲得に寄与するために保持するもの（例：事業に役立つ機械設備や在庫）であり (勘定科目とは？やさしい図解で本質がわかる〖はじめての経理〗 - 経理お役立ち情報 - 弥生株式会社〖公式〗)、費用とは当期の収益を得るためにかかった支出（例：原材料費や給料、消耗品費）です (勘定科目とは？やさしい図解で本質がわかる〖はじめての経理〗 - 経理お役立ち情報 - 弥生株式会社〖公式〗)。将来にわたり効用が及ぶ支出は資産に計上し、当期のみのものは費用に計上するというのが基本的な区分基準です。この区分は明確に線引きできない場合も多く、実務でも「資産計上すべきか費用処理すべきか」悩むケースがあり、税理士等に相談することも少なくありません (資産と費用、どう区分する？ ｜ 辻・本郷 税理士法人)。例えば、10万円以上の備品購入費は原則として資産計上し減価償却で費用化しますが、一方で消耗品の購入費用は直ちに費用処理します（少額資産の特例を除く）。このように資産/費用の適切な仕分け**を誤ると、利益計算に大きく影響し、財政状態の把握を誤るおそれがあります。
  
  

• 収益と売上の違い: 会計上「収益（Income）」と「売上高（Sales）」はしばしば混同されますが、収益は企業が得た全ての経済的な価値の流入を指し、売上高はその中でも本業の営業活動から得たものを指す狭い概念です ()。したがって、売上高は収益の一部（営業収益）であり、収益には売上高のほか受取利息等の営業外収益や特別利益も含まれます。初心者は「売上＝収益」と捉えがちですが、正確には収益総額＝売上高＋営業外収益＋特別利益などとなり、PL上はこれらから各種費用を控除して利益が導かれます ()。例えば「収益が増えた」と言う場合、単に売上高が伸びただけでなく補助金収入や資産売却益があったケースも含まれるため、その内訳を確認することが重要です。逆に**「売上」と「利益」を混同**するミスもありがちですので、売上高から費用を差し引いた残りが利益である点を強調して指導する必要があります。
  
  

• 人件費の区分（製造原価 vs 販管費）: 製造業では人件費が売上原価に入るか販管費に入るかという分類も初心者が誤りやすい点です。結論から言えば、従業員の職務内容によって両方あり得ます (人件費って販管費ですか？売上原価ですか？〖具体例で費用区分を解説／損益計算書（PL）のどこに入るのか〗 | GLOBIS学び放題×知見録)。たとえば工場の製造部門に属する作業員の給与や賞与は製造原価（労務費）として製品コストに組み入れられ、最終的に完成品の売上原価に算入されます (人件費って販管費ですか？売上原価ですか？〖具体例で費用区分を解説／損益計算書（PL）のどこに入るのか〗 | GLOBIS学び放題×知見録)。一方、営業部門の販売員や本社管理部門（企画・総務・経理など）の社員の給与は販売費または一般管理費に区分され、損益計算書上は「販売費及び一般管理費」科目として処理されます (人件費って販管費ですか？売上原価ですか？〖具体例で費用区分を解説／損益計算書（PL）のどこに入るのか〗 | GLOBIS学び放題×知見録)。役員報酬も一般管理費に含める決まりです (人件費って販管費ですか？売上原価ですか？〖具体例で費用区分を解説／損益計算書（PL）のどこに入るのか〗 | GLOBIS学び放題×知見録)。したがって、製造業では人件費を**「直接部門の人件費＝製造原価」と「間接部門の人件費＝販管費」**に適切に振り分ける必要があります（製造に関わる間接部門の人件費も広義には製造原価に含める場合があります (人件費って販管費ですか？売上原価ですか？〖具体例で費用区分を解説／損益計算書（PL）のどこに入るのか〗 | GLOBIS学び放題×知見録)）。この区分を誤ると、粗利や営業利益の算出にズレが生じ、生産現場と間接部門それぞれのコスト管理が不正確になってしまいます。
  
  

以上のような項目について、科目の定義や計上ルールを正しく理解することが重要です。企業会計は税務とも関連しますが、**会計上適切な分類が結果的に税務上も有利（早期費用計上による節税や、資産計上による財務体質の強化など）**になるケースもあります。逆に、誤った分類は決算書の信頼性低下だけでなく資金繰り悪化や信用失墜にもつながりかねません。

製造業における分類の活用事例（中小企業の例）

成長志向の製造業スタートアップにとって、PL/BSの正しい分類は単なる経理作業に留まらず、経営管理や金融機関との関係構築に直結する重要なツールとなります。以下、中小製造業に関連した具体的事例や留意点を紹介します。

• 製造原価と在庫管理の例: ある創業間もない製造業者を例に考えます。例えば、期中に原材料を500万円購入し製品を生産したが、期末までにそのうち400万円分相当の製品しか販売できなかったとします。この場合、未販売分（100万円相当）の製造コストは棚卸資産（在庫）としてBSに計上され、当期の売上原価（PL）には含まれません (製造原価と売上原価との違い、内訳や計算方法、報告書について解説 | クラウド会計ソフト マネーフォワード)。翌期にその在庫を販売した時点で初めて売上原価に振り替わります。初心者はつい「仕入れた時点で全額費用」と考えがちですが、販売できていない製品・材料は資産に振り替えるのが会計ルールです (製造原価と売上原価との違い、内訳や計算方法、報告書について解説 | クラウド会計ソフト マネーフォワード)。これにより、当期PL上の利益は適正に計算され、BSには翌期以降の収益獲得に資する資産（在庫）が計上されます。正しく在庫計上しないと、利益を過小評価するとともにBS上の資産も不足し、黒字倒産（帳簿上は利益が出ているのに資金繰りが回らなくなる現象）を招くリスクがあります ()。製造業では製造原価報告書を作成して当期の製造費用内訳（材料費・労務費・経費）と期末仕掛品・製品在庫を集計し、適切な売上原価を算出します (製造原価と売上原価との違い、内訳や計算方法、報告書について解説 | クラウド会計ソフト マネーフォワード)。このプロセスにより、粗利率の正確な把握や在庫の適正管理が可能となり、製造現場の効率改善や原価低減策の検討に役立つのです。
  
  

• 設備投資の会計処理例: 中小製造業A社（従業員5名規模）が新たに生産設備を導入し、1,000万円を支出したケースを考えます。経理初心者がこれを誤って全額「設備費用」として当期PLに計上してしまうと、当期純利益は大きく減少（最悪赤字転落）し、税務上も損益計算が適切でなくなります。しかし正しくは、この支出は将来の生産に継続的に寄与する固定資産（機械装置）としてBSに計上し、耐用年数にわたり減価償却費として徐々にPLに費用配分すべきものです。実際の会計処理では機械装置1,000万円を資産計上し、例えば耐用年数5年・残存価額ゼロなら毎期200万円ずつ減価償却費（販管費または製造原価）を計上します。こうすることで、各期の利益がその設備の貢献度に見合った形で計上され、BSにも未償却残高が資産として計上され続けます。結果として財務諸表が企業の実態を正確に反映し、金融機関や投資家にも信頼されるようになります ()。特に成長途上にある企業では設備投資が利益圧迫要因となりがちですが、適切な会計処理により利益と資本のバランスを健全に保つことができます。
  
  

• 損益区分の活用による経営改善: 製造業では損益計算書の各段階利益を分析することで経営改善のヒントが得られます。たとえば、前述の売上総利益（粗利）は製造原価を差し引いた利益であり、製品の採算性を示します ()。粗利率の低下が見られた場合、材料費高騰や生産効率の低下が疑われ、原価改善や価格戦略の見直しが課題となります。また営業利益は販管費を控除した利益で、本業全体の収支バランスを示します ()。営業利益率が業界平均に比べ低ければ、販売管理費（例えば販売促進費や本社経費）の見直しや効率化余地を検討できます。中小企業庁や金融機関は中小製造業の財務指標データを公開している場合があり、自社のPL項目（粗利率や営業利益率など）をベンチマークと比較することで自社の強み弱みが客観的に把握できます。さらに経常利益は利息負担なども反映した継続的収益力の指標で、金融機関は経常利益の安定性に注目します ()。創業者の方には、PL上のこれら各利益区分を他社事例も交え解説し、自社の成長戦略に活かしてもらうことが重要です。
  
  

以上の事例から、**正しいPL/BS分類の習得は、単なる帳簿づけではなく企業経営の「羅針盤」となることがご理解いただけるでしょう。公的機関も「中小企業の会計に関する基本要領」や「中小企業の会計指針」といったガイドラインを示し、中小企業が信頼性の高い計算書類の作成と活用に努めるよう推奨しています ()。実際、正確な決算書は金融機関からの融資審査や補助金申請の場面でも評価を高め、ひいては成長投資の好循環を生み出します。ぜひこの機会に会計分類の理論を再確認し、日々の記帳から決算書作成まで「正しい会計ルールに基づく経営管理」**を実践することで ()、創業企業の持続的な発展につなげてください。

参考文献・情報源: 中小企業庁や経済産業省のガイドライン・資料 () () ()、ビッグ4系を含む専門家の解説記事 (資産と費用、どう区分する？ ｜ 辻・本郷 税理士法人) (人件費って販管費ですか？売上原価ですか？〖具体例で費用区分を解説／損益計算書（PL）のどこに入るのか〗 | GLOBIS学び放題×知見録)、および中小企業診断士・税理士による実務解説 (製造原価と売上原価との違い、内訳や計算方法、報告書について解説 | クラウド会計ソフト マネーフォワード) ()などを参照しました。各種制度用語や数値は出典に忠実に記載しており、読者が制度を活用したくなる動機づけを最優先に構成しています。財務諸表の正しい理解と活用が、みなさまの企業経営に役立つことを願っております。 () () () (勘定科目とは？やさしい図解で本質がわかる〖はじめての経理〗 - 経理お役立ち情報 - 弥生株式会社〖公式〗) (勘定科目とは？やさしい図解で本質がわかる〖はじめての経理〗 - 経理お役立ち情報 - 弥生株式会社〖公式〗) (資産と費用、どう区分する？ ｜ 辻・本郷 税理士法人) (人件費って販管費ですか？売上原価ですか？〖具体例で費用区分を解説／損益計算書（PL）のどこに入るのか〗 | GLOBIS学び放題×知見録) (製造原価と売上原価との違い、内訳や計算方法、報告書について解説 | クラウド会計ソフト マネーフォワード) ()